ワインの世界を広げる!覚えておきたいブドウ品種20選【白・赤】

ワインを飲んだ日、その美味しさとともに多様なブドウ品種があることを知りました。赤ワインならカベルネ・ソーヴィニヨン、メルロー、ピノ・ノワール。白ワインならシャルドネ、ソーヴィニヨン・ブラン、リースリング。これらは世界中で愛される「基本品種」と言えるでしょう。

でも、ワインの世界はもっと奥深く、魅力的なブドウ品種がたくさんあります。今回は、基本品種に加えて知っておくと、ワイン選びがもっと楽しくなり、自分の好みが発見しやすくなる20品種をピックアップしてご紹介します! 白ブドウ10種、黒ブドウ10種に分けて見ていきましょう。

【白ブドウ品種 10選】 – 爽やかさから芳醇さまで個性豊か!

  1. アルバリーニョ (Albariño)
    • 特徴: 原産は比較的雨の多いイベリア半島北西部。熟した柑橘類(グレープフルーツなど)や黄桃、ジャスミンのような華やかな香りが特徴です。味わいは豊かでシャープな酸味があり、後味に心地よい塩味やミネラル感、ほのかな苦味が感じられます。その爽やかさとミネラル感から魚介類との相性が抜群で、「海のワイン」とも呼ばれるほどです。
    • 主な産地: スペイン(リアス・バイシャス)、ポルトガル(ヴィーニョ・ヴェルデ地方ではアルヴァリーニョと呼ばれる) ※近年は日本の新潟県や富山県でもこの品種を使ったワインが作られています。
    • 相性の良い料理: 魚介類全般、特に生牡蠣、タコのマリネ、白身魚のカルパッチョ、アクアパッツァ。
  2. ヴィオニエ (Viognier)
    • 特徴: フランス・ローヌ地方北部が原産のアロマティック系の代表品種。砂糖漬けのアンズやオレンジの果皮、黄桃、そしてバラの花や甘いスパイス(クローブ、シナモンなど)が力強く華やかに香ります。豊かな果実味とオイリーで厚みのあるボディ、やや穏やかな酸味が特徴です。
    • 主な産地: フランス(ローヌ北部の銘醸地「コンドリュー」が特に有名、南フランスのラングドック地方など)、アメリカ(カリフォルニア)、オーストラリア ※カリフォルニアやオーストラリアでは、より品種の特性を活かしたアロマティックなスタイルのワインが作られています。
    • 相性の良い料理: スパイシーなエスニック料理(タイカレー、ベトナム料理など)、鶏肉のクリーム煮、ホタテのソテー(バターソース)、アプリコットを使ったタルト。
  3. ヴェルメンティーノ (Vermentino)
    • 特徴: 起源ははっきりしていませんが、スペイン発祥でその後イタリアの地中海沿岸(特にリグーリア州やサルデーニャ島)で広く普及したという説が有力です。黄桃のような果実の香りに、柑橘類の皮、白い花、ハーブ(ローズマリー、タイムなど)、アーモンドのニュアンスが加わります。フレッシュな酸味と豊かなミネラル感があり、後味にグレープフルーツのような心地よい苦味を感じさせるのが特徴。辛口白ワインが主ですが、甘口やスパークリングワインにも使用されます。
    • 主な産地: イタリア(サルデーニャ島、リグーリア州、トスカーナ州沿岸部)、フランス(プロヴァンス地方、ラングドック地方、コルシカ島)
    • 相性の良い料理: シーフードのグリルやフリット、ハーブを効かせた魚介料理、ペスト・ジェノヴェーゼのパスタ、フレッシュチーズ。
  4. グリュナー・ヴェルトリーナー (Grüner Veltliner)
    • 特徴: オーストリア原産の重要な白ブドウ品種で、同国のブドウ栽培面積の約3割を占めます。レモンやグレープフルーツのような柑橘系の香りに、特徴的な白コショウやハーブ、レンズ豆のようなニュアンスが加わります。味わいは爽やかでしっかりとした酸味があり、アフターには豊かなミネラル感が感じられます。繊細でありながらも芯のある味わいが魅力です。
    • 主な産地: オーストリア(ヴァッハウ、カンプタール、クレムスタールなどが有名)
    • 相性の良い料理: 野菜料理全般(特にグリーンアスパラガス)、ウィンナーシュニッツェル、白身魚のグリル、寿司、ハーブを使った料理。
  5. ゲヴュルツトラミネール (Gewürztraminer)
    • 特徴: 淡いピンク色の厚い果皮を持つ白ブドウ品種。「ゲヴュルツ」とはドイツ語で「スパイス」を意味し、その名の通り非常にアロマティック。ライチ、バラの花、マンゴーやパパイヤのようなトロピカルフルーツ、そしてジンジャーやシナモンのような甘いスパイスの香りが爆発的に広がります。酸味は穏やかで、豊かな果実の甘さと風味が際立つワインを生み出します。スタイルは辛口から、貴腐ワインのような極甘口まで幅広く、アロマティック系品種の代表格です。
    • 主な産地: フランス(アルザス)、ドイツ、イタリア(アルト・アディジェ)、アメリカ、ニュージーランド
    • 相性の良い料理: スパイシーなアジア料理(特にタイ料理やインド料理)、フォアグラのテリーヌ、ウォッシュチーズ(マンステールなど)、豚肉の甘辛い味付け、フルーツを使ったデザート。
  6. シュナン・ブラン (Chenin Blanc)
    • 特徴: フランス・ロワール地方原産で、特に冷涼な気候でその真価を最大限に発揮します。若いワインでは洋ナシやカリン、蜂蜜、砂糖漬けにしたレモンなどの甘い果実の香りに、アカシアの花、ジンジャーや白コショウのようなスパイスのニュアンスが感じられます。しっかりとした酸の骨格を持つため、辛口、半甘口、極甘口(貴腐ワイン)、そして高品質なスパークリングワイン(クレマン・ド・ロワールなど)と、非常に多様なスタイルのワインを生み出し、長期熟成も可能です。熟成により、複雑なナッツやきのこの香りが現れます。
    • 主な産地: フランス(ロワール – ヴーヴレ、サヴニエール、コトー・デュ・レイヨンなどが有名)、南アフリカ ※南アフリカでは最大の栽培面積を誇り、かつて「スティーン (Steen)」と呼ばれていました。現在もこの品種は南アフリカで広く愛され、多様なスタイルのワインが造られています。
    • 相性の良い料理: 豚肉料理(ローストやソテー)、鶏肉や仔牛のクリーム煮、シェーブルチーズ、アジアン・フュージョン料理、リンゴやカリンを使ったデザート(甘口の場合)。
  7. ジルヴァーナー (Silvaner / Sylvaner)
    • 特徴: オーストリア原産とされる品種ですが、現在はドイツやフランス・アルザスで主に栽培されています。比較的早熟な品種で病気に弱いところもあり、冷涼な気候でその真価を発揮します。比較的個性は控えめで、柑橘類やハーブのような繊細なアロマと、すっきりとしたクリーンな味わいが特徴です。
    • 主な産地: ドイツ(特にフランケン地方。独特の扁平型ボトル「ボックスボイテル」に詰められ、豊かなミネラル感と力強い味わいの骨格が生まれます)、フランス(アルザス)
    • 相性の良い料理: アスパラガス料理(特に有名)、軽めの魚料理、野菜のテリーヌ、和食(お浸し、山菜の天ぷらなど)。
  8. セミヨン (Sémillon)
    • 特徴: フランス・ボルドーが原産樹勢が強く生産性の高い品種で、気候にかかわらず安定した収量が期待できます。若いワインでは柑橘類やハーブの香りが主体ですが、熟成するにつれて、熟した洋ナシ、アプリコット、アカシアの花、蜜蝋、ヘーゼルナッツのような複雑で豊かな香りが現れます。
    • 主な産地: フランス(ボルドー – ソーヴィニヨン・ブランとブレンドされ、世界三大貴腐ワインとして知られるソーテルヌなどの甘口デザートワインが造られます。辛口白ワインにもブレンドされることが多い)、オーストラリア(ハンター・ヴァレーでは早摘みしたセミヨンから造られる豊かな酸味の辛口ワインが有名。長期熟成能力も高い)
    • 相性の良い料理: 魚介のムニエルやバターソテー、鶏肉のクリーム煮、ホタテ料理、フォアグラ(貴腐ワインの場合)、ブルーチーズ(貴腐ワインの場合)。
  9. トロンテス (Torrontés)
    • 特徴: 原産はスペインとされていますが、現在ではほぼアルゼンチンのみで栽培されている、同国を代表する白ブドウ品種です。特に標高が高く冷涼な畑(サルタ州カファジャテなど)でその持ち味を発揮します。マスカットやライチのようなエキゾチックな果実、バラやジャスミンのようなフローラルな香り、そしてオレンジピールやハーブのようなスパイシーなニュアンスが混ざり合った、非常に強い芳香が特徴のアロマティック系品種です。香りは甘やかですが、味わいはドライで爽やかな酸味を持つことが多いです。
    • 主な産地: アルゼンチン(サルタ州、ラ・リオハ州、メンドーサ州)
    • 相性の良い料理: エスニック料理(特にタイ料理、ベトナム料理の生春巻き)、セビーチェ、カレー風味の料理、軽い前菜、柑橘系のサラダ。
  10. ピノ・グリ (Pinot Gris / Pinot Grigio)
    • 特徴: 果皮が灰色を帯びた赤紫色をしていますが、白ワイン用のブドウ品種です。「グリ (Gris)」はフランス語で「灰色」を意味します。原産はフランスのブルゴーニュ地方で、赤ワイン用の代表品種ピノ・ノワールの突然変異によって果皮の色が変化したものと言われています。洋梨やリンゴ、黄桃のような果実の香りに、華やかな白い花(スイカズラなど)やスパイス(白コショウ、ジンジャーなど)、時には蜂蜜のニュアンスが加わります。味わいはまろやかな酸味と豊かなボディが特徴ですが、産地や醸造法によってスタイルは大きく異なります。
    • 主な産地: フランス(アルザス – 豊満で複雑、時にはやや甘みを伴うスタイルが多い)、イタリア(「ピノ・グリージョ (Pinot Grigio)」と呼ばれ、すっきりと軽やかな辛口スタイルが主流)、ドイツ(グラウブルグンダーと呼ばれる)、アメリカ(オレゴン州など冷涼な地域で高品質なものが生産)、ニュージーランド ※近年、その多様なスタイルと食事との合わせやすさから、世界的に栽培面積が急増している人気品種です。
    • 相性の良い料理: 豚肉や鶏肉のロースト、キッシュ、アルザス風シュークルート、エスニック料理(ややスパイシーなもの)、クリームソース系の料理、リゾット。イタリアのピノ・グリージョは軽い前菜や魚介のマリネ、サラダにもよく合います。

【黒ブドウ品種 10選】 – エレガントから力強さまで多彩な魅力

  1. カベルネ・フラン (Cabernet Franc)
    • 特徴: カベルネ・ソーヴィニヨンによく似た特徴を持つ非常に歴史のある赤ワイン用ブドウ品種。原産はフランスの南西部といわれています。早熟なため涼しいエリアでも完熟することができ、冷涼なフランス・ロワール地方では主要品種として単一で使われることが多いです。一方、ボルドー地方などでは、人気の高いカベルネ・ソーヴィニヨンの補助品種としてブレンドされることも多く、世界各国で栽培されています。
    • 香り/味わい: 木苺(ラズベリー)やチェリーのような赤い果実、スミレの花の香りに、ピーマンや杉のような清涼感のあるアロマが特徴。カベルネ・ソーヴィニヨンに比べるとタンニンは穏やかで、心地よい酸味を感じる、エレガントで軽やかな味わいを持つことが多いです。
    • 主な産地: フランス(ロワール – シノン、ブルグイユ、ソミュール・シャンピニーなどが有名、ボルドー右岸 – サン=テミリオン、ポムロールなど)、イタリア(北東部フリウリなど)、アメリカ(カリフォルニア、ワシントン州、ニューヨーク州)
    • 相性の良い料理: ローストチキン、豚肉のソテー、ハーブを効かせた肉料理(仔羊など)、キノコ料理、パテ・ド・カンパーニュ、カマンベールチーズ。
  2. カルメネール (Carmenère)
    • 特徴: フランス・ボルドー地方原産で、カベルネ・フランとグロ・カベルネ(カベルネ・ソーヴィニヨンの祖先の一つとされる古い品種)の自然交配で生まれた品種です。19世紀後半のフィロキセラ(ブドウネアブラムシ)禍によりヨーロッパではほぼ栽培されなくなりましたが、それ以前の19世紀半ばにチリへ持ち込まれていました。長年メルロと勘違いされ一緒に栽培されていましたが、1994年にDNA鑑定により別品種であることが判明。現在ではチリが世界最大の栽培地域となり、同国を象徴する赤ワイン品種として人気を博しています。
    • 香り/味わい: ブラックベリーやプラムのような色の濃い熟した果実味に、チョコレートやコーヒー、タバコ、そして特徴的なピーマンやパプリカ、ハーブ、黒胡椒のようなスパイスの香りが複雑に混ざり合います。凝縮感のある味わいで、がっしりとした力強いタンニンと、しっかりとした酸を持つのが特徴です。※比較的手頃な価格で楽しめるコストパフォーマンスの高いワインが多いのも魅力です(1000円以下で見つかることも)。
    • 主な産地: チリ(マイポ・ヴァレー、コルチャグア・ヴァレー、カチャポアル・ヴァレーなど)
    • 相性の良い料理: スパイスを効かせた肉料理(ラムの香草焼き、チリコンカンなど)、ビーフシチュー、焼肉(タレ)、ピーマンの肉詰め、熟成チーズ。
  3. ガメイ (Gamay)
    • 特徴: 日本でも秋の風物詩としてよく知られている「ボジョレー・ヌーヴォー」は、このガメイ品種から造られています。原産はフランスのボジョレー地方。正式名称は「ガメイ・ノワール・ア・ジュ・ブラン(Gamay Noir à Jus Blanc)」で、「黒い果実で果汁は白い」という意味です。早熟で多産な品種ですが、暑い気候では早く熟しすぎる傾向にあるため、高品質なガメイワインは、比較的冷涼なエリアで、花崗岩質などの痩せた土壌から生まれます(特にボジョレー地区北部の「クリュ・ボジョレー」と呼ばれる10の村)。
    • 香り/味わい: イチゴやチェリー、ラズベリーのようなフレッシュな赤い果実の香りが豊かで、スミレや牡丹の花、時にはバナナやシナモンのような独特の香りも感じられます(マセラシオン・カルボニック醸造法に由来することも)。味わいは柔らかく、タンニンは控えめフレッシュな果実味と生き生きとした酸味が特徴で、甘草のような甘苦い後味を持つこともあります。軽やかでフルーティー、飲みやすいスタイルが一般的です。
    • 主な産地: フランス(ブルゴーニュ地方ボジョレー地区)、スイス(栽培に力を入れている)、フランス・ロワール地方、アメリカ(オレゴン州など)
    • 相性の良い料理: シャルキュトリー(生ハム、パテ、ソーセージ)、鶏肉料理(焼き鳥、鶏のから揚げなど)、軽いチーズ(カマンベール、ブリーなど)、ガレット、お好み焼き。
  4. グルナッシュ (Grenache / Garnacha)
    • 特徴: スペインを原産とするブドウ品種で、スペインでは「ガルナッチャ (Garnacha)」と呼ばれています。強い風や乾燥した気候に抵抗力があり晩熟で長い生育期間を必要とするため、比較的暖かいエリアを好みます。糖度が上がりやすく、アルコール度数が高くなりやすいのも特徴の一つです。
    • 香り/味わい: ラズベリーやイチゴジャム、イチジクのような甘く熟した赤い果実の香りが華やかに広がり、白コショウやタイムのようなハーブ、リコリス(甘草)のニュアンスも感じられます。味わいは肉厚な果実味があり、酸味は比較的低め(穏やか)。タンニンも滑らかなことが多く、あたたかさを感じる柔らかくボリューム感のある口当たりが特徴です。
    • 主な産地: 地中海沿岸地域が中心で、スペイン(プリオラート、リオハ、アラゴンなど)やフランス南部(ローヌ南部 – シャトーヌフ・デュ・パプなど、ラングドック・ルーション、プロヴァンス)で広く栽培されています。オーストラリア(バロッサ・ヴァレーなど)やアメリカ(カリフォルニア)でも栽培されています。※単一品種でワインになることは比較的少なく、特にフランスではシラー (Syrah) やムールヴェードル (Mourvèdre) などとブレンドされることが多く、その頭文字をとって「GSM」ブレンドと呼ばれることもあります。高品質なロゼワインの主要品種としても重要です。
    • 相性の良い料理: スパイスを使った肉料理(タジン鍋、カスレ、プロヴァンス風煮込み)、鴨肉のロースト(ベリーソース)、ジビエ(鹿肉など)、ハーブを効かせたグリル料理、トマト煮込み料理、ピザ。
  5. サンジョヴェーゼ (Sangiovese)
    • 特徴: イタリアのトスカーナ州が原産とされる、イタリアを代表する黒ブドウ品種。現在もそのほとんどがイタリアで栽培されています突然変異をしやすい品種のため、多くのクローン(亜種)が存在し、同じイタリア国内でも地域によって様々な呼び名(ブルネッロ、モレッリーノ、ニエルッキオなど)があります。このため、産地やクローン、醸造方法によってワインの味わいは多種多様です。
    • 香り/味わい: ブラックチェリーやプラムなどのストーンフルーツ、スミレの花の香りが特徴的で、しばしば、なめし革やタバコ、ドライハーブ、土、トマトのような複雑なニュアンスも持ちます。味わいはしっかりとした(しばしば高い)酸味と、キメ細やかで力強いタンニンが骨格を成すことが多いです。熟成により複雑味が増します。
    • 主な産地: イタリア(特にトスカーナ州キャンティキャンティ・クラシコブルネッロ・ディ・モンタルチーノ、ヴィーノ・ノービレ・ディ・モンテプルチアーノなどの名高いワインを生む。その他、エミリア・ロマーニャ州、ウンブリア州など中部イタリア全域)
    • 相性の良い料理: トマトソースのパスタ(ラグーソースなど)、ピザ(特にマルゲリータ)、牛肉のグリルや煮込み(ビステッカ・アッラ・フィオレンティーナなど)、生ハム、サラミ、熟成チーズ(ペコリーノ・トスカーノなど)。
  6. シラー / シラーズ (Syrah / Shiraz)
    • 特徴: フランスのローヌ地方北部が原産とされる黒ブドウ品種。適応能力が高いため、世界中で栽培されていますが、特に温暖で湿度が低い気候でその真価を発揮します。オーストラリアでは「シラーズ (Shiraz)」と呼ばれ、同国の代表品種として高い人気を誇ります。ワインは非常に濃い色調となるのが特徴です。
    • 香り/味わい: ブラックベリー、ブルーベリー、カシス、プラムのような黒系果実の凝縮した香りに、スミレの花、黒コショウのような特徴的なスパイス香、そして熟成により皮革、ジビエ、燻製肉、リコリスのような複雑なニュアンスが現れます。味わいはボディがしっかりしていて、豊富なタンニンを持ち、長期熟成が可能なポテンシャルを秘めています。原産地ローヌ北部では冷涼さを反映したスパイスの香りが強くエレガントさも兼ね備え、オーストラリアなど新世界ではより熟した果実味を持つ力強い味わいとなる傾向があります。※近年、ニューワールドを中心に栽培面積が増加中の人気品種です。
    • 主な産地: フランス(ローヌ北部 – コート・ロティ、エルミタージュ、コルナスなど、ローヌ南部やラングドックではブレンド主体)、オーストラリア(バロッサ・ヴァレー、マクラーレン・ヴェイル、ハンター・ヴァレーなど)、アメリカ(カリフォルニア、ワシントン州)、南アフリカ、チリ、アルゼンチン
    • 相性の良い料理: ステーキ(特にペッパーソース)、ラムチョップのグリル、ジビエ(鹿肉、猪など)、バーベキュー、スパイスを効かせた煮込み料理(ビーフシチューなど)、熟成したハードチーズ。
  7. ジンファンデル (Zinfandel)
    • 特徴: ヨーロッパ(クロアチアの土着品種「ツーリエンナック・カステランスキー」が起源)原産ですが、19世紀にアメリカへ渡り、現在ではカリフォルニアの土着品種といっていいほど主要な品種となっています。雨に弱く乾燥に非常に強いことから、温暖で乾燥したエリアを好みます。
    • 香り/味わい: 熟度によってラズベリーのような赤い果実から、ブラックベリー、プラム、そして濃厚なジャム(ブラックベリージャムなど)のような香りまで幅広く変化します。黒コショウやクローブなどのスパイス香や、リコリス、ドライフルーツ、時にはココアやヴァニラ(樽由来)のような強い芳香も特徴です。味わいは豊かな果実味があり、アルコールが高めのしっかりしたボディを持つことが多いですが、タンニンは比較的滑らかなタイプもあります。※赤ワインだけでなく、「ホワイト・ジンファンデル」と呼ばれる、やや甘口のロゼワインもアメリカで非常に人気があります。
    • 主な産地: アメリカ(カリフォルニア – ロダイ、ソノマ、パソ・ロブレスなどが有名)、イタリア(プーリア州 – 「プリミティーヴォ (Primitivo)」として知られ、ジンファンデルとDNAが同一または極めて近縁とされる)
    • 相性の良い料理: バーベキューリブ、ハンバーガー、プルドポーク、スパイシーな肉料理(ケイジャン料理、メキシコ料理など)、ピザ、チリコンカン、鴨肉のロースト(ベリーソース)。ホワイト・ジンファンデルはアペリティフや軽い前菜、中華料理にも。
  8. テンプラニーリョ (Tempranillo)
    • 特徴: スペイン、リオハ地方が原産とされ、現在もスペインとポルトガルで主要品種となっています。名前の由来はスペイン語で「早熟な」を意味する ‘temprano‘ から来ており、スペインの他の多くの黒ブドウよりも早く熟すため、冷涼な気候でも完熟する特性を持っています。様々なスタイルのワインが存在します。
    • 香り/味わい: ストロベリー、プラム、チェリーのような赤い果実や黒い果実のまろやかな果実味があり、程よい酸味緻密で滑らかなタンニンが特徴です。樽熟成(特にアメリカンオーク)によって、ヴァニラやココナッツ、タバコ、なめし革、そして熟成由来のドライフラワーのような香りが加わることが多く、特にリオハ地方ではアメリカンオーク樽で長期熟成した伝統的なスタイル(クリアンサ、レセルバ、グラン・レセルバ)が有名です。※特徴的な金色のがかかったボトル(マルケス・デ・リスカルなど)も有名で、「網タイツのワイン」として親しまれることもあります。
    • 主な産地: スペイン(リオハ、リベラ・デル・ドゥエロ、トロ、バルデペーニャスなど)、ポルトガル(ドウロ地方、アレンテージョ地方 – アラゴネス (Aragonez)ティンタ・ロリス (Tinta Roriz) と呼ばれる)
    • 相性の良い料理: 羊肉料理(ロースト、煮込み)、生ハム(ハモン・セラーノ、ハモン・イベリコ)、パエリア、トルティージャ(スペイン風オムレツ)、熟成チーズ(マンチェゴなど)、トマトベースの煮込み料理。
  9. ネッビオーロ (Nebbiolo)
    • 特徴: イタリア北部ピエモンテ州が原産で、イタリアワインの王様「バローロ (Barolo)」と女王「バルバレスコ (Barbaresco)」は、このネッビオーロ品種100%で造られる最高級ワインです。名前の由来はイタリア語で「霧」を意味する ‘nebbia‘。晩熟なこのブドウを収穫する時期(10月下旬~11月)になると、ピエモンテの丘陵地帯の畑が霧に覆われることから名付けられたといわれています。
    • 香り/味わい: 乾燥したバラやスミレのようなフローラルな香りに、チェリーやプラム、ラズベリー、甘草 (リコリス)、タール、なめし革、ドライハーブのような複雑で高貴なアロマが特徴。若いうちは非常に強いタンニンしっかりした高い酸味が際立ちますが、長期熟成によってタンニンが柔らかく、ビロードのような舌触りになり、深遠な味わいへと変化します。この強いタンニンと酸により、世界で最も寿命が長い(長期熟成能力が高い)ワインの一つと言われています。
    • 主な産地: イタリア(ピエモンテ州 – バローロ、バルバレスコ、ランゲ、ロエロ、ガッティナーラ、ゲンメなど)
    • 相性の良い料理: トリュフを使った料理(リゾット、パスタ)、赤身肉のローストや煮込み(牛肉のブラザート、ジビエ)、熟成したハードチーズ(パルミジャーノ・レッジャーノ、カステルマーニョなど)。
  10. マルベック (Malbec)
    • 特徴: フランス南西部(カオール地方など)が原産といわれています。かつてはボルドーでも補助品種として栽培されていましたがフィロキセラ禍などで減少し、現在ではアルゼンチンが世界の栽培面積の9割近くを占める主要な産地となっています。ポリフェノール含有量が最も高いブドウ品種の一つで、ワインは非常に濃厚な色調を呈し、フランス(特にカオール)では歴史的に「黒ワイン (Vin Noir)」と呼ばれたほどです。
    • 香り/味わい: ブラックベリープルーン、カシス、ダークチェリーのような濃厚な黒系果実の香りに、スミレの花、チョコレート、タバコ、レザー、ヴァニラ(樽由来)のニュアンスが加わります。味わいは凝縮したタンニンとしっかりとした酸味を感じる力強いものが多く、豊かな果実味が特徴です。特にアルゼンチンでは、高地栽培により、濃厚でありながらもジューシーで柔らかい果実味と滑らかなタンニンを感じる、親しみやすいスタイルのワインが多く造られています。
    • 主な産地: アルゼンチン(メンドーサ州が中心 – ルハン・デ・クージョ、ウコ・ヴァレーなど)、フランス(南西部カオール地方 – 「コット (Côt)」や「オーセロワ (Auxerrois)」とも呼ばれる)、チリ、アメリカ、南アフリカ
    • 相性の良い料理: ステーキ(特にアルゼンチンビーフのアサード=バーベキュー)、ハンバーガー、ラム肉のグリルや煮込み、鴨肉料理、カスレ(フランス南西部の豆料理)、ブルーチーズ。

ブレンドやテロワールでさらに広がる味わい

今回ご紹介したのは、それぞれの品種の特徴が分かりやすい単一品種で造られることが多いワインですが、ワインの世界では複数のブドウ品種をブレンドすることで、より複雑でバランスの取れた味わいを生み出すことも一般的です。例えば、フランスのボルドーワインやローヌワインなどが有名ですね。それぞれの品種の個性が合わさることで、一杯のワインがより魅力的なものになります。

また、同じブドウ品種でも、育った土地の気候や土壌、日照、標高などの自然環境(これをテロワールと呼びます)によって、香りや味わいは大きく異なります。例えば、冷涼な地域のシラー(フランス・ローヌ北部など)はスパイシーでエレガント、温暖な地域のシラーズ(オーストラリアなど)はより果実味が豊かで力強いスタイルになる、といった具合です。これもワインの面白いところであり、産地ごとの個性を楽しむ醍醐味と言えるでしょう。

まとめ

いかがでしたか? カベルネ・ソーヴィニヨンやシャルドネといった基本品種に加えて、今回ご紹介した20品種を知っていると、ワインショップの棚を眺めたり、レストランのワインリストを開いたりするのが、これまで以上にワクワクするはずです。

ラベルに書かれた品種名から、「これは華やかな香りがするのかな?」「こっちはしっかりした味わいかな?」と想像してみるのも楽しいですよね。たくさんの品種、たくさんのワインの中から、ぜひ色々なものを試してみて、あなただけのお気に入りの一本、お気に入りのブドウ品種を見つけてみてください。ワインの世界は、知れば知るほど、もっと深く、もっと楽しくなりますよ!

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